meaningless

動物ってきもちわるい。

彼女はシーツの上から俺を見上げ、ぽつりとそう言った。

何で?

俺は腰を動かすのを止めて聞き返した。
息はもう上がっていて、けれど、てっぺんはまだ見えない。
俺なんかよりもまだまだ余裕がありそうな彼女は、
視線を俺から天井に移す。

何となく。
だってこんなことしなきゃ、
生きていられないんだもの。

こんなこと?
俺には意味がよくわからなかった。
だってこういうのって普通のことだし。
周りのやつらもよくやってる。
それに

そっちだってやってんじゃん。

そう言ってやると、
彼女の視線はまた俺の方を向いた。

うん。そう。
だから思うの。
わたしもこういうことしないと、
生きていけないんだなって。

彼女は寝言のように呟いて、深く長い息を吐いた。
彼女の考えていることがいまいちわからない馬鹿な俺は、
他の子にもよくしている無意味な問いで返す。

俺のことが嫌なの?

ううん。別に。
あなたが嫌いってわけじゃないけど。

けど。
彼女はそこで言葉を切って、
今度はちゃんと俺の目を見た。

あなただって
わたしのことが好きってわけじゃないでしょ?

うん。
まぁ、そうだけど。

思わず正直に答えると、
彼女は何故か可笑しそうに笑った。

ほらね。
わたしもそうだもの。

彼女の目は黒く、
少しだけ涙で潤んでいる。
俺はそれを舐めてみたくなったけど、
その目は音も無く閉じられてしまった。

だから
だから、思うんだよね。

彼女は目を閉じたままそう言い
一瞬だけ苦しそうな顔をしたあと、また深く長い息を吐いた。

その表情があんまりにも綺麗で、
俺は言葉を返さずに、動くのを再開させた。


この部屋は明るく、けれど窓の外は暗い
まるで、奈落の底みたいだ。
街の中だっていうのに静かで、
彼女の声だけが、細い線の様に、雨の様に
止め処なく俺の耳に積もっていく。






ああ、

俺、
何してんだっけ。

何が、
悲しいんだっけ。


泣きたかったはずだったって、
今、思い出したよ。


(どくんどくん)
(体内に咲く子宮のうねり)
(熱く滾る血液、羊水、赤の群)
(薄い膜の中、命未満の)
(憐れな俺の欠片たち)
(気持ち良くも無く)
(苦しくも無い)
(その地獄に)
(お前たちの空は映るのか)


俺は急にものすごく眠たくなって、
ゆっくりと彼女の上に落ちた。




(meaningless--FIN.)