惑星エレベータに乗って

もうこの地に足を踏み入れることは無い
と思い至った私は、貴方を見下ろしながら
重力に逆らった道をゆっくりと登っている

青い空と黒い宇宙の混ざる場所
月と星は光らず、太陽は傾き静かに自転する

機械の音が響く
私を未知の世界へと吸い込んでいく音と
冷たい鈍い銀色の筒の中
私は何も感じないアンドロイドになった気分で
眼下に広がる美しい星を見た

貴方のいる地上は徐々に雲に覆われ
その粒の一つ一つを下界に見送りながら
私は自ら切って見失った糸の先を探すよう
目の前の光景を無心に眺めている

貴方はここで死にたいと言った
私はどこか遠くで生きたいと思った

永遠を誓ったような仲じゃない
だから佇む場所も、眺める景色も
感じる匂いも、温度も、色彩も
違って当然なのだと

その全部を理解するのに
貴方と居れる時間はあまりにも短すぎた

だから私は登っていくのだ
貴方には決してわかならい世界に
決して見ることの無い場所に

青い空はいつの間にか黒い宇宙に飲み込まれ
視界には目眩のような闇
星の光は届いても
地上の温度は届かない

寂しくなんか無いのだ
ただ、こうしてできた私の横の空白を
あまりに持て余して困っている
それだけの話

太陽が見えなくなったら
一度だけ、深く眠ろう
重力に逆らう機械の音に
そっと耳を傾けながら



(惑星エレベータに乗って--FIN.)